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バイオ系大学院生から公務員へ就職?!

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ぼくはバイオ系の大学院へ進学し、行政職の地方公務員(政令市)となりました。

理系の大学院まで進学して、「なぜ公務員?」と疑問に思われる方も多いと思いますが、意外とこのパターンは多いんです。なぜならバイオ系分野の就職先は非常に少ないからです。

バイオ系学部を目指す高校生やそのご両親に言えることはこれです。

バイオ系学部の就職先は絶望的であり、絶対に避けること

高校の先生は教育学部卒・民間就活未経験であり、このような現状を全く知りません。それゆえ生物学に興味があるというだけで、バイオ系学部を勧めたり、「理系は就職率が非常に良いから」などという無責任な言葉を投げ掛けるのです。

できるだけぼくのような人間が出ないように、大学6年間の経験をもとにバイオ分野の現状を伝えたいと思います。

 バイオ系学生は専門技術が身につかない奴隷?

「大臣にお聞きしますけど“ピペド”ってご存知でしょうか」――。

STAP細胞問題の研究不正が社会問題となった時期に開催された、国会の科学技術・イノベーション推進特別委員会で、日本共産党真島省三議員がこう切り出しました。

ピペドとは、「ピペット奴隷」「ピペット土方」の略称で、バイオ系の大学院生やポスドク※が教授や雇用主に奴隷のように扱われる様を皮肉に表したネットスラングです。

研究に用いる器具であるマイクロピペットで液体を吸ったり出したりする実験作業が、土や石を相手にする単純作業と同じと揶揄されこのように呼ばれています。

ポスドクとは、ポストドクターとのことで、大学院生と助教間に位置づけられた任期付きのポジションのことです。

ぼくも大学院生までバイオ系研究室に在籍していましたが、専門技術は全く身につきませんでした。ピペットを持ちながら、こんなことして就職できる企業って本当にあるのだろうか不安な毎日を過ごしていました。

そのような学生の気持ちを汲み取ってか(?)、「頑張ればみんなもこんな未来が待ってるよ」とでも言わんばかりに、研究室の掲示板には一流企業で働いている OBの記事が掲載されていました。しかし、バイオ系出身で一流企業の研究者になれるのはほんの一握りです。この就職氷河期に一体何いっているのだと学生は冷ややかな反応だったのを覚えています。

 

理系学部の中でも非常に就職率が悪い

理系学部内の就職率にはかなりの格差があります。まず、電気電子・機械・情報系・建築系はかなり就職率が良いです。その次に化学系。そして、ダントツで悪いのがバイオ系です。

なぜこれほど就職率が悪いのかというと、企業の採用枠がかなり少ないからです。

例えば、機械系出身だと、重工業メーカーの開発や、食品メーカーの工場の製造に携わる仕事など多岐に渡ります。

しかし、バイオ系の主な就職先は、食品メーカーや医療メーカーの研究職・品質管理ぐらいありません。ここには工学部・理学部・農学部・薬学部といった様々な学部のバイオ系がこぞって応募してきます。特に医療メーカーは薬学部と競争しなければならないため、かなり厳しいです。少ないパイを多くの就活生が取り合っているため、結果的に学歴フィルターを受けやすくなり、旧帝大などの上位の大学しか相手にされないという現状があります。

 

ポスドク問題

バイオ業界は就職するも地獄、研究者として大学に残るも地獄なんです。

大学院修了後、とりあえずの就職先としてポスドクになるのですが、これは任期付きの雇用となるため非常に不安定で、いつ雇用が打ち止めになるかわかりません。しかも、助教授や准教授、教授のポストは増えるわけでもなく、定年退職を待つしかないというのが現状です。キャリアパスが全く整備されていないため「高齢ポスドク問題」という現象も生じています。

 

ポスドクの中で一番多いのがバイオ系分野

文部科学省の科学技術・学術政策研究所の調査結果(2015年実績)では、ポスドクは日本で約1万6千人存在すると言われています。

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参考:ポストドクター等の雇用・進路に関する調査(2015年度実績)[調査資料-270]の公表について | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)

 

ポスドクを専門分野ごとに分析した上のグラフを見てください。ポスドク全体うち、理学系は36%と一番多く占めています。その理学系の中でも生物(バイオ系)は42%と突出した数字となっております。

また、農学系も同じくバイオ系と考えるとポスドクの中でもバイオ系がかなりの割合を占めていることがわかります。

 

 

なぜバイオ系学部に進学する学生が減らないのか

ここがバイオ系学部の闇の深いところです。原因として、日本のトップのバイオ分野の研究者(例えば京都大学の山中教授など)が、かなり脚光を浴びている現状があります。

バイオ技術は再生医療等に大きく貢献しているため、今非常に注目を浴びていますが、このような最先端の研究を行っている機関はほんの少数です。つまり、大手企業が参入するような市場ではまだありません。

しかし、大学としては多くの学生を呼び込むため闇の部分は伏せつつ、将来が明るい分野であることをアピールして、研究を手伝う人材を集めているということです。

 

最後に

冒頭でも触れましたが、このような現状を高校生が知らないことはもちろん、進路相談に乗ってくれる高校の先生ですら知りません。

もし、自分の知り合いがバイオ分野の学部を目指しているようでしたら、一度このような現状を話してみてください。